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殴り合わない人々」とは、「殴り合うコミュニケーション」を行わない者のことです。彼らには、「睦び合う」か「殺し合う」かという両極端な二つのコミュニケーションしかありません。「殴り合えない人々」とも言えます。

どちらのコミュケニーションを図るかは、「殴り合う人々」同様、まず相手との関係によって決まります。肯定する/信頼できる相手なら「睦び合う」、否定する/信頼できない相手なら「殺し合う」わけです。もちろん後者では、コミュニケーションを避けるという選択肢も健在です。

困るのは、「信頼できる相手と意見が合わない」場合の選択肢が無いことです。「睦び合う」のでなければ、敵対して「殺し合う」(または無視する)しかありません。仲間のままでいたい、敵を作りたくないなら、常に相手と意見を合わせていなくてはならないのです。しかしそのようなことは可能でしょうか?

間違いの無い手として、自分の意見をまったく持たない、持っていても人前で明かさないようにすれば、相手から異論を唱えられることは回避できます。加えて、常に相手の意見に賛同する、本心では異論があっても黙っていれば、「意見が合わない」という状況を避け続けることが可能となります。

もし、そこにいる全員がそのように考えたなら、誰一人として自分からは発言しなくなることでしょう。それではコミュニケーションが成り立ちませんから、そういう場合の対策も必要です。例えば、「有名な誰か」「正しい筈の誰か」の意見を皆で復唱し、褒め称え合っていれば大丈夫です。逆に、「有名でない誰か」「間違っている筈の誰か」の意見を皆で嘲笑することでも同じ効果が得られます。

これでどうにか一安心できるのが、「殴り合わない人々」です。

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