自由なダンジョンを作る

どうにかして具体像を示すべく、今回から「自由に遊ぶ」ゲームプレイに向いたシナリオの作成例と運用例とを示してまいります。まずは「ダンジョンシナリオ」を取り上げ、その作成について考えてみます。

ここでは、「ダンジョン」とは複数の部屋が通路で繋がった地下建造物を指し、そこを主な冒険の舞台とするシナリオを「ダンジョンシナリオ」と呼ぶこととします。

さて、「手順4 : シナリオを作る」で示した通り、下記の三要素から作成します。

  1. 「事件」…PCが関わる「事件」を定めること。
  2. 「人物」…「事件」に関わる「人物」を定めること。
  3. 「場所」…「事件」や「人物」に関わる「場所」を定めること。

一番単純な「ダンジョンシナリオA」は、次の通り。

  1. 「事件」…ダンジョンがあること
  2. 「人物」…無し
  3. 「場所」…ダンジョンの各部屋や通路、そこにいる生物、そこにある罠や宝など

ただし、ダンジョンの存在だけで「事件」になるには、財宝がある(かも知れない)が怪物もいる(かも知れない)、などの条件が必要です。また、そのダンジョンを築いた「人物」だけでも設定してあれば、本人が登場しなくとも、ダンジョン作成やその探索がやり易くなります。「人物」の使用目的に従って「場所」を設定すれば良く、またプレイヤーによる探索も使用目的を推理しつつ行われるためです。

少し複雑な「ダンジョンシナリオB」は、次の通り。

  1. 「事件」…NPC1が誘拐されてダンジョンの中に囚われている
  2. 「人物」…誘拐されたNPC1、NPC1の救出を依頼するNPC2、NPC1を誘拐したNPC3
  3. 「場所」…NPC2のいる町、ダンジョン内の各部屋としてNPC1がいる部屋やNPC3がいる部屋、それ以外の部屋や通路など

「事件」は、事実ではありますが、必ずしも真実をあらわすわけではありません。NPC3がNPC1を何故さらったか、などの各NPCの真意は「人物」の設定として定められます。「場所」の内、町には酒場や市場、各店舗など、あらゆる施設が含まれます。ダンジョンの各部屋には、「事件」に合わせて設定され、それと無関係な生物や罠や宝の設定は必須ではありません。「事件」と無関係にダンジョンを築いた「人物」が設定されるなら、その設定が探索を容易にも複雑にもするかも知れません。NPC3が設計者と同じ使用目的でダンジョンを使っていない場合には複雑化します。

もっと複雑な「ダンジョンシナリオC」は、次の通り。

  1. 「事件」…NPC1が誘拐されてダンジョンの中に囚われている、ダンジョンに封印された邪悪な存在が目覚めつつある
  2. 「人物」…誘拐されたNPC1、NPC1の救出を依頼するNPC2、NPC1を誘拐したNPC3、封印を解こうとするNPC4、封印を守ろうとするNPC5
  3. 「場所」…NPC2のいる町、ダンジョン内の各部屋として、NPC1がいる部屋やNPC3がいる部屋、封印を解くための場所、邪悪な存在のいる場所、それ以外の部屋や通路など

二つの「事件」は無関係でも良いのですが、関係があれば複雑になり、各々の解決が相反することにすれば更にややこしくできます。例えば、NPC1を救出すると封印が解けてしまう、など。設定に裏表があれば勿論のこと、また「人物」の一部を同一人物にしたり、「場所」の一部を重複させることでも、話を複雑にできます。NPC2とNPC4、NPC3とNPC5を同一人物とし、NPCのいる町(のある場所)を封印を解くための場所とする、など。もちろん、ダンジョン設計者が封印と関係あるなら、それに従って各部屋が設定されることとなります。

なお、ゲームシステムについては特定していませんが、その選択でも多少の差が生じます。例えば、D&Dを使うのと、クトゥルフダークエイジを使うのでは、かなり違ってくるでしょう。

次回は、上記三例の運用について考える予定です。