自由なダンジョンを遊び続ける

ゲームマスター「その通路を進むと、突き当りで左右に分かれている。(…中略…)判定は成功?では、左の通路へ向かって、何かを引きずったような新しい傷が床にあることに気付いたよ。どれくらいの重さかは、この成功度では分からない。さぁ、どうする?」
プレイヤーA「右へ行こう」
プレイヤーB「いや、左へ行こうよ」

手順6 : プレイを続ける」即ちゲームプレイ本編では、次の流れがひたすら繰り返されます。

  1. あるプレイヤーが行動する(キャラクターに行動させる)。必要ならルールで判定。
  2. 他のプレイヤーやゲームマスター(のNPC)が対処して行動する。必要ならルールで判定。
  3. ルールだけでは不明確な結果や環境の変化をゲームマスターが判断する。

まずプレイヤーが行動し、それにゲームマスターが対応するのです。冒頭の例文は、実は「3、1、2」の順となっています。最初のゲームマスターの説明は、それ以前にあったはずの「その通路を進む」や「通路を調べる」というプレイヤーの行動(1)に対する対応(3)なのです。「1、2、3の繰り返し」としては似ていても、この「どの段階を1と考えるか」がまったく異なるゲームプレイを生みます。

プレイヤーの行動を「1」とするなら、シナリオで準備された道でもプレイヤーが選ばなければ、ゲームプレイ上それは存在しません。シナリオに無くともプレイヤーがそこを進めば、そしてルールシステム上許されれば、新たな道が切り開かれます。ダンジョンでは、文字通りに「無かった道を切り開く」には限度がありますが、どの通路を進むか、どの部屋に入るか、通路や部屋で何をするか、などはプレイヤー次第です。

さて、プレイヤーがそれぞれ「自分が面白いと思う」ように行動すれば、互いの行動が相容れない状況もしばしば生じます。分かれ道で右に行くか左に行くか、分かれていなくとも進むか戻るか、扉があれば触るか開けるか入るか否か、生物と出会えば話しかけるか隠れるか戦うか逃げるか、などなどで、選ぶ行動が常に全員同じであるはずはありません。むしろ「違って当たり前」ですから、相容れない状況を皆で楽しむのが吉。そしてプレイヤー同士で今後について話し合います。

  • 分離 : 各自が「自分が面白いと思う」ように別個に行動する。右に行く者と左に行く者とで別行動、など。
  • 妥協 : 多数決や、約束を条件に、行動を一本化する。右に行き、手掛かりが無ければ戻る、など。
  • 融和 : 判断や関わり方を変えて、行動を一本化する。財宝よりも魔物の首の方が金になる、など。

「融和」のためでなくとも、「始める」際に決めた「シナリオへの関わり方」はいつ、どのように、何度変えても構いません。楽しむために遊ぶのですから、もっと「自分が面白いと思う」行動が見つかれば、そちらに移行するのが自然なことでしょう。もちろん「分離」より「妥協」、「妥協」より「融和」の方が、それを手早く済ませる難度は高くなります。そしてもちろん、難しい方が難しい故に「面白さ」も大きくなります。

プレイヤーA「なんで?きっとそっちに魔物がいるぜ。宝探そうよ」
プレイヤーB「オレは魔物退治に来たんだもの!」
プレイヤーD「どっちでもいいよ~、ってか魔物も宝持ってるんじゃない?」(融和への誘い)
プレイヤーA「なるほど、じゃ、その宝を多めにくれれば…」(妥協)
プレイヤーBとD「ダメ」(妥協の却下)
プレイヤーC「まさか、これ人身御供の連れてかれた跡じゃ…」
プレイヤーA「じゃ、左に行く」
プレイヤーB「へ?」
プレイヤーA「宝よりも人身御供を助ける方を優先するよ。行こう、行こう」(融和)
ゲームマスター「みんな、それで良いの?じゃあ、君たちが左の通路をしばらく進むと…」(続く)