RPGにおける「謎解き」

「自由なミステリーを遊ぶ」に対して、水無月冬弥さん、acceleratorさん、玄兎さん、Betaさんからトラックバックをいただきました。有難うございます。

長文になりましたので各位へのお返事は別書込とし、今回は「ミステリーシナリオ」についての私の考えを示します。どう考えたが故に、「自由なミステリー」がありえるのか、という話です。

単なる「なぞなぞ」ではなく、推理小説のような「謎解き」を卓上RPGで扱うと、小説とは異なる特性が生じます。「謎解き」の中に見出される、次の三つの問いについて考えてみましょう。

  1. 何が、「謎」なのか?
  2. どのような過程を経れば、「謎解き」できるのか?
  3. どのような結果に至れば、「謎解き」できたことになるのか?

例えば、「ある富豪が離れで死体となって発見された。扉や窓には内側から鍵がかかっていた。警察は自殺と判断するが、富豪の娘はそうとは信じない」という事件なら...。

  1. 密室を作りだしたトリックと犯人が、「謎」である。
  2. 富豪の嗜癖、前日の発言の背景、隣人が聞いた奇妙な音、そして富豪の弟(犯人)の会社から無くなった機材を知れば、「謎解き」できる。
  3. トリックを解き明かし、その犯人を警察に捕まえさせれば、「謎解き」できたことになる。

推理小説では、著者が自問自答して決めた通りに、犯人が「謎」を出し、探偵は「謎」を解きます。読者はそれを読むだけで、介入することはありません。

しかし卓上RPGにおける「ミステリーシナリオ」では、「謎」を出す犯人はゲームマスター、それを解く探偵はプレイヤー、と別の人間が担当します。考える人間が違えば、問いへの答えが変わっても不思議でありません。例えば先の事件で、プレイヤーは次のように考えるかも知れません。

  1. 富豪が自殺した理由が、「謎」であろう。
  2. 富豪の嗜癖、前日の発言の背景、そして富豪の過去を知れば、「謎解き」できるだろう。
  3. 悲しむ娘を納得させられれば、「謎解き」できたと言えよう。

すべてが違わなくとも、プレイヤーが最善と思う結果や、そこに至るための過程は、必ずしもゲームマスターの期待通りにはなりません。まして、「何が謎か」「どうすれば謎解きできるか」を、プレイヤーに解いて欲しいが故にゲームマスターが隠すなら、プレイヤーは自分が見出した「謎」しか知り得ないこととなります。

このように「謎解き」の内容が参加者間で異なる場合がありえることが、小説では生じない、卓上RPGにおける「謎解き」の特性です。この特性に対する姿勢には、次の二つが考えられます。

ひとつは、この特性を受け入れ、推理小説とは異なるものとして「ミステリーシナリオ」を遊ぶことです。ゲームマスターが「推理小説のような状況」を示したなら、プレイヤーはその状況について自分なりに考え、「自分が面白いと思う」ように行動します。何を「謎」と見なすか、それをどうやって解こうとするか、あるいは解かないで他の手を選ぶか、などはプレイヤーに任せるのです。これが、ゲームでしか成立し得ない「自由なミステリー」です。

もうひとつは、「推理小説のような展開」になるように「管理」する遊び方です。ゲームマスターが決めた「何が謎か?」などの答えをプレイヤーに伝えることで、期待通りの「謎解き」を成立させるのです。「あなたは密室殺人のトリックを解き、犯人に法の裁きを受けさせねばならない」などと告げておけば、プレイヤーは「何が謎か?」と考えなくて済みます。これが、ゲームを小説に近づけるための「管理されたミステリー」です。

二つの遊び方は、それぞれ一長一短、そして異なる面白さがあります。どちらをより好むかは個々の判断に任せれば良いし、可能なら両方とも楽しむのが最善である、と私は考えます。

次回はようやく、各位へのお返事をば。