卓上RPGにおけるメタゲーム

先行する記事「メタって何?」と「卓上RPGの階層構造の基本」とに基づき、卓上RPGにおける「メタゲーム」について整理します。

ゲーム (ゲームプレイ)
キャラクター(PCとNPC)を行動させることで、舞台世界を変えていくこと。(広義のゲーム)
キャラクター自身の知識などによって、キャラクターの行動を決めること。(非メタゲームとしてのゲーム)
メタゲーム (メタゲームプレイ)
キャラクターが知らない、プレイヤーやゲームマスターの知識などによって、キャラクターの行動を決めること。

どのような「プレイヤーやゲームマスターの知識など」を用いるかによって、多種多様な「メタゲーム」が成立します。以下、それを細分化して、各々の例を挙げてみます。

ルールシステム
使用するルールシステムにおいて、より命中し易く、ダメージの大きい武器を選ぶ。
魔法でしか傷つかない怪物に、魔法を使えないキャラクターが出会った時、そうと知らなくても即座に逃げる。
悪漢がヒロインの首筋にナイフを当てて人質に取った時、最大ダメージでもヒロインのヒットポイントはゼロにならないので、迷わず悪漢を攻撃する。(いわゆる「首ナイフ」問題)
世界設定、関係資料
漁村インスマウスの図書館に稀覯書を閲覧しに行くのに、特に理由なく、ショットガンや手榴弾を隠して持っていく。
シナリオの元ネタがある映画と気づいたので、それと同じ展開になるように行動する。
リプレイではキャラクターが酒場にいる場面から始まっていたので、自分のキャラクターも酒場にいることにする。
本人の技量、知識
プレイヤー自身の話術で、キャラクター同士の交渉を成功させる。
ゲームマスターがアンデッド好きと知っているので、取り合えずアンデッド対策の装備を持っていくことにする。
空間に充満した粉末に引火すると大爆発を起こすことがあるので、それをキャラクターが知らなくても、それで敵を攻撃する。(いわゆる「粉塵爆発」問題)
本人の思想、信条
プレイヤーが人種差別を嫌っているので、キャラクターにも人種差別をさせない。
プレイヤーが暴力を嫌っているので、キャラクターにも戦闘をさせない。
プレイヤーが宗教を嫌っているので、キャラクターにゲーム世界内の宗教を攻撃させる。
現実の時間
予定時刻までにゲームプレイが終わるように、キャラクターを行動させる。
現実の特定の時刻になると、ゲーム内でのイベント(爆弾が爆発するなど)が発生する。
(なお、1シナリオに数セッションかける場合など、予定時刻になったらプレイの続きを次回とするのは、これに該当しない。
現実の人間関係
あるプレイヤーが初心者(または異性)なので、そのキャラクターに対して他のキャラクターが優しく接する。
あるプレイヤーが初心者(または異性)なので、そのキャラクターに対しては敵が強力な攻撃をしない。
あるプレイヤーがサークルの先輩なので、そのキャラクターに対しては敵が強力な攻撃をしない。
採用するRPG理論
戦闘はPCが楽に勝つものと苦しんで勝つものとしか無い、として、すべての敵と迷いなく戦う。
戦闘でPCが勝つか負けるかは時の運、として、逃亡や降伏も選択肢に入れて判断し、可能なら戦いは避ける。
展開が「起承転結」の形に収まるのが良い、として、序盤~中盤はクライマックスへの準備行動に徹する。
意義ある決断を下すことこそが面白い、として、そのような機会が与えられるようにする。
PC間の掛け合いこそが面白い、として、別行動しなくてはならない状況はなるべく避ける。
自分の「見せ場」こそが面白い、として、キャラクターごとの「見せ場」が平等に与えられるようにする。

...以上、他にも色々と考えられますが、この辺で。

「メタゲームとは良いものだ」と考える者は、自分が「良い」と思う行為のみを集めて「メタゲーム」と称し、それ以外は「悪いゲームプレイ」と呼んだりします。「メタゲームとは悪いものだ」と考えるなら、その逆。

多様性を理解すれば、好き嫌いはあるにせよ、ひとつひとつを選択肢として受け入れることが可能となります。そうすれば、様々なプレイの現場に柔軟に対応し、そして楽しむことができる、と私は考えます。