プレイヤー管理装置としての「シーン」 (FEAR型シーン制)

TORG型シーン制」を基に、更にプレイヤーの意思決定(Decision-making)をゲームマスターが管理できるように「進化」させた手法は、「トーキョーNOVA The Revolution」(アスペクト1998)において初めて導入されました。

その後、「ブレイド・オブ・アルカナ」「アルシャード」「ダブルクロス」などのFEAR(ファー・イースト・アミューズメント・リサーチ)社製RPGにおいて、続々と同種の工夫が追加されていきました。ここでは、それらを総称して「FEAR型シーン制」と呼ぶこととします。

「FEAR型シーン制」とは、「TORG型シーン制」に次のような工夫を追加したものです。

  • 「フェイズ」 (オープニング、リサーチ、クライマックス、エンディング)
  • 「アクトトレーラー」または「今回予告」
  • 「ハンドアウト」と、キャラクター個別の導入シーン(オープニングシーン)
  • 「シーンプレイヤー」

「TORG型シーン制」では、どのような「シーン」に登場するかは示されるものの、その中で「何をすれば良いか」までは不明瞭でした。「FEAR型」は、上記のような工夫によってシナリオの全体像をプレイヤーに知らしめ、シナリオ運用上「正しい意思決定」ができるよう支援、即ち「管理」するものです。

オープニングからエンディングまでの「フェイズ」は、現在の「シーン」が属する段階を示すことで、キャラクターに推奨される行動を示すものです。例えば「オープニング・フェイズ」であれば、持ちかけられた話に素直に関わるべき、となります。

アクト・トレーラー」または「今回予告」は、そのシナリオの背景にあるストーリーを暗示するものです。情報を得た時や、登場人物と出会った時には、その暗示を参考にして対応を判断することができます。

ハンドアウト」では、関わるべき状況や人物が、キャラクターごとに示されます。これらはプレイヤーがキャラクターにさせるべき行動について判断するための個別の資料となり、更にキャラクター個別の導入シーンによって補強されます。

シーンプレイヤー」は、活躍する予定のキャラクターに、その機会を間違いなく与えるための工夫です。各プレイヤーは、「シーンプレイヤー」に指定された「シーン」では全力を尽くし、それ以外ではその「シーン」での「シーンプレイヤー」に譲れば、間違いを犯さなくて済みます。

これらを介してシナリオの全体像をプレイヤーが理解すれば、シナリオを展開させる上で有意義と思われる「シーン」を、プレイヤー側からも提案し易くなります。もちろん、本当にそれを採用するか否かは、ゲームマスターが判断します。

「シーン」のみならずプレイヤーの意思決定までも「ゲームマスター主導」とすることで、プレイヤーは責任を負わず、安心してゲームプレイを楽しむことができる。これが「FEAR型シーン制」の特徴です。