努力しなくてもよいRPG

玄兎さんの論考「遊びに費やすコストとか」に刺激を受けた考察です。先に「努力とは何か」で述べた考察に基づいて、いよいよ「努力しなくてもよいRPG」と、その対極にある「努力しなくてはならないRPG」について述べます。

前回、三種類の「努力」を挙げました。一般に「努力」とされるものは、後の二種類ですが。

  • 無意識の努力。日常的な行為などで、疲労や出費などが意識されなければ、努力と感じられない。
  • 望んでする努力。やりたいからしている行為では、疲労や出費などは喜ばしいものと感じられる。
  • 嫌々する努力。やらなくてはいけないからする行為では、疲労や出費などはただ苦痛でしかない。

これらをそのまま卓上RPGのゲームプレイに適用すると、次のようになります。

  • 無意識に努力するゲームプレイ。疲労や出費などは気にならない程度に抑え、気軽に遊ぶ。
  • 望んで努力するゲームプレイ。疲労や出費などは幾らでも喜んで受け入れて、真剣に遊ぶ。
  • 嫌々努力するゲームプレイ。疲労や出費などは嫌々ながらも受け入れて、やむを得ず遊ぶ。

あるゲームプレイが三者のいずれであるかは、参加者一人一人で異なり、その能力や状態、嗜好や目的意識などによって個々に決まります。また卓上RPGには、データ処理、キャラクター描写、情報整理など、多様な要素が含まれますから、それらの比率などによっても変化します。

例えば、「キャラクター作成は難なくこなし、戦闘には情熱的に取り組むが、情報収集は苦痛に感じる」という者なら、ひたすら戦闘を繰り返すシナリオを好み、キャラクターが死んで(再作成するの)も構わない、となるでしょう。情報収集にじっくり時間をかけ、かつ巧妙にこなすべきシナリオでは、苦痛しか感じず、不満を溜め込むに違いありません。

そして、このような個人差をどのように扱うか、前回その選択肢を二つ挙げました。

  • 能力・嗜好・目的達成意欲などの異なる者同士で、異なる「努力」を同居させる。
  • 能力・嗜好・目的達成意欲などの等しい者だけで、同じ位の「努力」を共有する。

前者を選べば、誰もが「努力してもよい」し「努力しなくてもよい」ことになります。後者なら、共通する能力・嗜好・目的達成意欲に応じて、全員が「努力しなければならない」ことになります。

努力しなくてもよいRPG」では、ゲームプレイの各要素について、望んで努力したい者だけが努力すればよい、そうでない者は努力せずにできる範囲でやればよい、とします。キャラクターの行動描写や台詞を上手く演じても、ぞんざいでも、どちらでも良い。技能や呪文などのデータを素早く的確に扱えても、いつまでも憶えられなくても、どちらでも良い。一緒にゲームプレイをできれば、他はどうでも良い、とするのです。今、目の前にあるゲームプレイにしか興味がない、それ以外に目指すものなど何もない、という姿勢です。

努力しなくてはならないRPG」では、ゲームプレイの各要素ごとに、努力すべき程度が定められます。キャラクターの台詞を上手に演ずべき、とか、データを効率よく組むべき、とされれば、全員がそれに努めなくてはなりません。努める気が無い者や、努めても結果を出せない者は、いずれゲームプレイから外れることとなります。目指すものが得られないなら、一緒にゲームプレイをする意味は無いのです。目の前のゲームプレイの彼方に「理想のゲームプレイ」を見て、それを目指して全力を尽くそう、とする姿勢です。

なお、「努力してはならない」という選択肢は、ありそうで、ありません。「無意識の努力」を強いてしない、というのは、「意識的な努力」無しにはできませんので。

さて、ここで玄兎さんの上掲論考に立ち返り、次の一文を引用します。

でもゲームの練習っても、ねェ。
色々と出来ることはあるよ。基礎からしっかりやったら効果あるよ。
だけど相手がどこまでヤル気なのかって、分からないでしょう。
それに、練習課題がどれだけ負担になるか、とかも。

「努力しなければならないRPG」では、誰もが努力しなくてはなりませんから、教え合うことが当然必要です。そして「努力しなくてもよいRPG」であっても、教わった努力を実践するか否かは本人次第ですから、一応は教え合っておけば良いことになります。どちらであっても、どのように努力すれば良いか、その方法について、いつでも誰もが語って良い、のです。ただ、そのように「努力しなければならない」か、それとも「努力しなくてもよい」か、は明確にしておいた方が良いでしょうけど。

以上が、卓上RPGにおける「努力」についての私の考察です。

さて、最後に。上記のような「努力しなくてもよい」とする姿勢が廃れ、「努力しなくてもよかった」と過去形になることがあります。仕事であれ、スポーツであれ、卓上RPGであれ。何故そうなるのか、それを避けることはできるのか、について更に次回述べます。「初心者向け」とも関係のある話です。