ゴールデンルール以外のヒエラルキー

今回は、本来の「クトゥルフ神話TRPG」(CoC)などのように、「ゴールデンルール」や「FEAR型成長点ルール」を用いていないゲームシステムの「遊び方」について述べます。そこでは、どのようなヒエラルキーが成立するのか、というと、厳密には「ヒエラルキー」にはならないのだけど。

まずは定義。ここでいう「遊び方」とは、ルールシステムや世界設定をどのように用いて遊ぶか、ということです。「ゴールデンルール」などとして特定の遊び方が明記(強制)されていなければ、どのように遊ぶかは参加者が決めます。「ゲームデザイナーの意図」などはどうでも良いことで、そのゲームシステムを購入したユーザーがどのように楽しみたいか、で決めれば良いのです。

例えばCoCであれば、「死んだり狂ったりするのを楽しむ」か「クトゥルフ神話の脅威と対決するのを楽しむ」か(など)に加え、舞台となる時代の常識にどの程度まで従うか、暴力など嫌悪感を抱くかも知れない描写をどこまで行うか、プレイヤーによる行動描写はどこまでPCの行為判定に影響を与えるか、などの選択があります。それらの組み合わせによって、「遊び方」は多種多様となるのです。

実際のゲームプレイの現場では、どのように遊ぶか、は「何となく」でも何とかなっています。多種多様と分かっていれば、「何となく」合わせられますから。稀に、「遊び方」のひとつを「ゲームデザイナーの意図に適う、正しい遊び方」だと思い込んで、他の参加者との間で問題を引き起こす者もいますが。それはさておき。

以下、「ゴールデンルール」以外の場合のヒエラルキー、みたいなもの。例によって上位から順に。

  1. 遊び方の決定者
  2. 遊び方(ルールシステム等の使い方)
  3. ルールシステム(および世界設定)
  4. ゲームマスターまたはプレイヤー
  5. プレイヤーまたはゲームマスター

上記「遊び方の決定者」とは、ゲームデザイナーではありません。ユーザー、即ちゲームマスターかプレイヤーかの誰かが提案し、それにゲームマスターとプレイヤーとの全員が合意して決まります。提案と合意とを省略して、「何となく」ゲームマスターに合わせて、またプレイヤー同士で互いに調子を合わせて、大抵は何とかなります。公式リプレイに準拠、という手もありますが、全員が一通り読んでおかねばならなくなるし、解釈に差が生じたりもして、面倒かも知れません。

ゲームデザイナーは、といえば、ルールシステムおよび世界設定の提供者に過ぎません。「自分がデザインしたのだから、自分が思う通りに遊ばれるべきだ」と欲したところで、ゲームプレイの現場を管理するなどできやしません。「理想のゲームプレイ」を実現したければ、それは自分自身が参加するゲームプレイの中で試みれば良いのです。「自分はこのように遊びたい」なら自然なこと、「他人にこのように遊ばせたい」は余計。

さて、決められた「遊び方」に基づいて、「ルールシステムおよび世界設定」が運用されます。「遊び方」に合わせて、データや各種設定などが変更されたり、追加されることもあるでしょう。それらの諾否も「遊び方の決定者」全員によりますが、事後承諾もありえます。例えば、最後の敵のデータがゲームマスター自作の場合。「遊び方」からひどく逸脱していなければ問題になりません。そのために「遊び方」が上位にあるのです。

その下は、「(極端でない)ゲームマスター主導」なら「4.ゲームマスター、5.プレイヤー」、「プレイヤー主導」なら「4. プレイヤー、5. ゲームマスター」となります。両者は隔絶していませんので、ゲームプレイの過程で、時に位置が逆転します。例えば「ゲームマスター主導」であっても、PCの行動はルールシステム通りであれば、保障されます。そのような行動の結果、シナリオで予定された展開が変わってしまっても、ゲームマスターはそれを受け入れなくてはなりません。ルールシステムはゲームマスターよりも上位にあるためです。

最上位(1)の「遊び方の決定者」が最下位(4,5)の「ゲームマスターおよびプレイヤー」と同一人物なのですから、厳密にはこれは「ヒエラルキー」では無いよなぁ、と考える次第。ゲームマスターとプレイヤーとは、ゲームプレイの内容がどちらの主導であっても、「遊び方の決定者」としては全参加者が平等、とも言えます。

これらに比して「ゴールデンルール」という特異な「遊び方」は結局、どのようなゲームプレイに向いているのか、あるいは向いていないのか、次回考察します。