モチベーションとは何か

卓上RPG(Table-top Roleplaying Game ; TRPG)における「モチベーション」を考える前に、今回から三回ほど「モチベーション」そのものについて記します。三回分の内容は、次の通り。

  1. モチベーション(motivation)とは、そもそも何なのか。
  2. モチベーションを高める(上げる)が高いとは、どういうことか。(→記事)
  3. 何故、褒められるとモチベーションが下がる(低まる)のか。(→記事)

さて今回は、モチベーションとは何か、しばしば混同される「motive」と比較しつつ、私なりに定義してみます。

「モチベーション」という語の説明には、「動機づけ」「やる気」「行動を起こし、持続する力」「何か目標とするものがあって、それに向けて、行動を立ち上げ、方向づけ、支える力」など、様々なものがあります。いずれも理由あっての語用でしょうが、背景を知らずに見習うのは危険です。そこで、ひとつの英単語として、その語根から解釈することとします。

「motivation」も「motive」も、ラテン語動詞「movere」を語源とします。「movere」は、自分の手足や物品などを「動かす」の意で、「move」の語源でもありますが、古フランス語を経由して語根「mot-」に連なる英単語を生みました。以下、語根に近い順に示します。

  • motion ... mot+ion。名詞「(何かを)動かすこと、動き、動作」
  • motive ... mot+ive。形容詞「(誰かに何かを)動かさせるような、動かすのに役立つ」
  • motive ... mot+ive。名詞「(誰かに何かを)動かさせるようなこと、動かさせる原因」
  • motivate ... mot+ive+ate。動詞「(誰かに何かを)動かさせるようなこと(=動機)を与える」
  • motivation ... mot+ive+ate+ion。名詞「(誰かに何かを)動かさせるようなこと(=動機)を与えること」

語の成り立ちにおいて、「motive」は「動き」に直接つながっています。「犯罪の動機」には「motive」が用いられることからも、行動に直接つながるような、短期的で、時には感情的なものを指す、と考えられます。仕事であれ勉強であれスポーツであれ、何らかの行為を一回または短期間させるような「動機」です。

対して「motivation」は、直接には「motive(動機)」を扱うものです。「動機」を継続的に与えるような、長期的・計画的なものと考えられます。仕事であれ勉強であれスポーツであれ、何らかの行為を幾度も、長期間やり続けさせるものが「動機づけ」です。単発的な「動機づけ」も、無いわけではありませんが。

冒頭の説明例を思い出すと、「行動を起こし、持続する力」や「何か目標とするものがあって、それに向けて、行動を立ち上げ、方向づけ、支える力」は適切ですが、「やる気」では「motivation」の一面しか表していないように思われます。

以上は、語学的な考察。次回からの、残る二件については、心理学の話になります。