CoCにおける戦車砲と、その回避

クトゥルフ神話TRPG』(Call of Cthulhu RPG、CoC)について、またもやTogetterに興味深い議論が挙がっていました。

ルール解釈は自由にやればよいことですが、参考までに私なりの解釈を述べます。

問題1:エイブラムス戦車の対人砲弾が探索者から30y離れた位置に着弾した。着弾位置と探索者の中間点には、厚さ15cmのコンクリート壁が立っている。探索者が回避行動しなかった場合に、探索者が受けるべきダメージを、答えなさい。

120mm戦車砲のダメージは(英語版では)「15D6/4y」なので、30y離れていれば「8D6」。15cmのコンクリート壁が阻止するダメージは「9」。よって、受けるダメージは「8D6-9」(0~39)を、探索者ごとに振って決めます。期待値19じゃ、まず生き残れませんが。

なお、コンクリート壁は穴だらけにはなるものの、すべては破壊されません。そういうルールですから。

問題2:塹壕などの隠れる場所が存在しない中で。エイブラムス戦車の対人砲弾が探索者から0y離れた位置に着弾した。ルールブックでは、<回避>ロールを忘れてはならないとあるので探索者は<回避>ロールし成功した。探索者がダメージを受けなかった合理的な状況を答えよ。

「回避に成功した」なら、戦車砲のダメージを免れるような塹壕に逃げ込むか、それに類する物陰に隠れることができた、ということになります。

率直に申し上げて、問題の出し方が良くありません。ルールによって「回避に成功した」なら、そうならない状況の方が許されないのです。他に「合理的な状況」を示せないなら、「塹壕などの隠れる場所が存在しない」という前提の方が間違っていることになります。

私論を述べますと、『クトゥルフ神話TRPG』のようなゲームシステムでは、「ルールシステムや世界設定」は「ゲームマスター(GM)やプレイヤー」よりも上位にあります。たとえGMが「戦車砲で撃たれたのだから、ルールを無視してでも探索者は死ぬことにしたい」と欲しても、そんな我儘は通用しません。どうしてもGMの願望を通したければ、それが許されるゲームシステムを選ぶべきなのです。例えば、GMをルールよりも上位に置く「ゴールデンルール」採用のゲームなどを。

以上は、あくまでも私の解釈であって、もちろん「唯一絶対の真理」ではありません。各現場においては、その「参加者間で共有できる認識」=「Common Sense」=「常識」で判断してください。

なお、『Call of Cthulhu RPG』第7版(CoC7)では、「砲術」(Artillery)技能が基本ルールブックから導入されています。戦車を運転し、砲塔を動かす辺りまでは「重機械操作」でできますが、戦車砲を撃って命中させるには「砲術」技能で判定することになります。

正直、「戦闘ルールがザル」なのは、その通りですけどね。だが、そうでなかったルールがあっただろうか(いや、ない)。

これ、「首ナイフ」に通じる命題というか、思考実験ですわな。誰もが往々にして、自分の思い込みの方をルールよりも優先したがる、ということ。