「ドラマ作成ポイント」採用ルールシステム例

今回は、「ドラマ作成ポイント」を採用したルールシステムのデザイン例を示します。前回示したものとは異なる「予断の内容の不一致」対策も組み込んでおります。ここではプレイヤー用ルールのみ、名前はまだ無い。

まずは、データ表現ルール。プレイヤー用キャラクター(PC)には、次の五つのデータがあります。

  • 得意領域」のひとつめ。PCが得意とする分野を、職業や技芸、趣味などとして任意に指定し、その分野に当て嵌まる行為に用いる。ゲームプレイ中に1回だけ回復できる。
  • 「得意領域」のふたつめ。ひとつめに同じ。
  • 「得意領域」のみっつめ。ひとつめに同じ。
  • 可能性」。得意領域のどれにも当て嵌まらない行為に用いる。ゲームプレイ中の回復はできない。
  • 存在感」。0になるとゲームプレイから外れる。行為には用いないが、「得意領域」回復に使用。

次には、データ作成ルール。100ポイントというのは思い付きの数字で、バランスとかは考慮されていません。

  1. 職業や特技、趣味などとして、PCの「得意領域」を三つ、任意に決める。
  2. 100ポイントを、三つの「得意領域」、「可能性」、「存在感」の五つに割り振る。
  3. 「得意領域」の上限は、PCの年齢と同値。他には、上下限値は特になし。

データ作成の例を三つ。

  • 30歳の「私立探偵30」「格闘術20」「人懐っこい15」「可能性15」「存在感20」
  • 16歳の「高校生16」「バイト16」「忍術16」「可能性30」「存在感22」
  • 70歳の「老婆10」「うむ聞いたことがある40」「暗殺拳24」「可能性1」「存在感25」

そして、データ運用ルール。第一に、ゲームプレイ内での行為について。日常的な行為は、「ドラマ作成ポイント」の消費無しに行うことができます。

  1. 「劇的な行為」を行うには、「得意領域」か「可能性」を1ポイント消費する。消費の際、どのようにして行ったかを描写すること。
  2. 「劇的な行為」を無効にするには、「得意領域」か「可能性」を2ポイント消費する。どのようにして無効としたかを描写すること。
  3. 無効を引っ繰り返すには、「得意領域」か「可能性」を3ポイント(最初の1に2追加)消費する。描写すること。(※この消費は、PCと一部NPCにのみ許される)

劇的な行為」(Drama)とは、ゲームプレイの展開を左右させうる重要な行為を指します。「雑談して時間を潰す」「コンビニに行く」「料理を食べる」などは含みませんが、「雑談して重要な情報を得る」「悪漢を追う」「料理を食べさせて相手を懐柔する」「いなかった場面に登場する」などは該当します。

行為に「得意領域」と「可能性」のどちらを消費するかは、幾らでも拡大解釈し、どちらを用いても構いません。ただし、一回のゲームプレイ内で同じ行為をするならば、必ず同じポイントを消費することとします。なお、ある行為に消費するポイントが、PCごとに異なることには問題ありません。

例えば「手掛かりを見つける」のに「私立探偵」を消費した場合、そのPCはそのゲームプレイ中で「手掛かりを見つける」には「私立探偵」を消費しなくてはなりません。他のPCは、「私立探偵」を持っていても、「手掛かりを見つける」のに他の「得意領域」や「可能性」を消費して構いません。

第二に、ダメージ。物理的に、精神的に、あるいは社会的に相手を傷つける行為は、相手の「存在感」を減らすことで表現されます。

  1. ダメージを与えるには、「得意領域」か「可能性」を1ポイント消費して、相手の「存在感」を1減らす。消費の際、どのようにして相手にダメージを与えたかを描写せよ。
  2. ダメージに対抗するには、「得意領域」か「可能性」を2ポイント消費して、「存在感」1減を無かったことにするか、1減はそのままに相手の「存在感」を2減らす。描写せよ。
  3. 対抗を引っ繰り返すには、「得意領域」か「可能性」を3ポイント(最初の1に2追加)消費すれば、2減を無くすか、相手を3減らす。描写せよ。(※この消費は、PCと一部NPCにのみ許される)

「崖から落ちた」「飛行機から落ちた」「首を切り落とされた」などの描写によっては、ゲームプレイから一旦姿を消すことがあります。それでも、「存在感」が残って(=まだどこかにいるような気がして)いれば、ゲームプレイに再登場することができますが、なぜ無事だったかは描写せよ。

第三に、回復。すべての数値はゲームプレイ後に初期値に戻りますが、「得意領域」のみゲームプレイ中に回復させることができます。

  • 三つの「得意領域」は一回のゲームプレイで一回だけ、「存在感」の現在値を半減(端数切捨)させることで、三つとも同時に最大値まで回復させることができる。
  • 「可能性」と「存在感」は、ゲームプレイ中に回復させることはできない。

さて、このルールシステムの「予断の内容の不一致」対策とは、ポイント消費の手順と限度を定めていることです。基本は1ポイント、相手が抗えば2ポイント、それを破るには3ポイント、それ以上の消費はありません。どれほど「予断」に拘ったところで、3ポイント以上拘り続けることはできないのです。

ここで「首ナイフ」。幼稚園児が1ポイント消費して、凄腕の暗殺者の首をナイフで切って即死させることができます。暗殺者が2ポイント消費して、ナイフで切られたのは残像であったことにできます。幼稚園児が2ポイント追加して3ポイントとして、デコピンで暗殺者の首を蒸発させることもできます。

ポイントを消費しさえすれば、「首をナイフで切られたら即死」という「予断」も、「首を切られても即死しない」という「予断」も、「即死しても死んでいなかった」という「予断」も、等しく実現します。自分の「予断」だけが実現し、他は実現して欲しくない、という者でなければ、問題ありますまい。

以上、ひとつの思い付き。いずれ気が向いたら、ゲームマスター用ルールも書くかも。けど、名前がまだ無いしなぁ。