アクター方式 (1997年執筆)

本論考は、1997年5月15日に発表されたものです。文中の趣旨が、現在の筆者の考察とは異なる場合もありますので、ご注意願います。

あなたのキャラクターには似たような人物がいませんか?
そのようなキャラクターを整理してみましょう。

いくつかのキャンペーンやシナリオをこなしたプレイヤーは、既に複数人のキャラクターをプレイしたことでしょう。しかしそれらのキャラクターに似通った部分はないでしょうか。設定を少し変えただけの似たようなキャラクターを何度プレイしても、新しいキャラクターを経験したことにはなりません。

コンベンションなどでも数多くプレイしているベテランプレイヤーの手元には、その度に作成したキャラクターの記録が残ります。もしそれらのキャラクターをもう使わないなら勿体無いことですが、しかし同じキャラクターを別の場で使うのも気が引ける場合があるでしょう。

マスターは一度のシナリオプレイで、何人ものNPCの関与を演出します。シナリオ上重要な脇役はその度にあらかじめ設定しているでしょうが、あまり重要でない、あるいは想定していなかった端役の登場の際はどうでしょうか。紋切り型のキャラクター設定でやり過ごすのが常套手段でしょう。

私がここに提唱するアクター方式とは、その内容は決して耳新しい手法ではありません。ベテランプレイヤーやマスターの中には、既にお使いの方も大勢いらっしゃることでしょう。これは、そのようなありふれた工夫を確信犯的に使うことで、別の可能性を引き出そうという試みです。

アクター方式とは、キャラクターは架空の俳優(アクター)によって演じられていると仮定することで、似たような複数のキャラクターを整理するという手法です。架空の俳優にはプレイには出ることのない名前を与えるのもよいでしょう。

この方式の長所は次の通りです。

  1. 同じようなキャラクターを一人のアクターに統合することで、キャラクターの使い捨てを防ぐ。
  2. 同じアクターを持つ別のキャラクターのロールプレイの経験は、そのアクターに帰属し蓄積される。このため、より深く、かつ柔軟性のある人格がアクターの中に形成されていく。
  3. 似たような人格のキャラクターは一人のアクターとなるため、別のアクターを設定することでそれまでとは全く異なる人格を設定することとなる。
  4. 別のメンバーでのプレイの際には、違うデータのキャラクターを作成し、アクターを選択することとなる。使いまわしのキャラクターにある他のプレイヤーとのバランスの問題も起こらず、なおかつ深みのある人格をプレイすることができる。
  5. マスターは、端役用のアクターを用意しておく。何度も使用する内にアクターとしての人格が形成されるため、即効のキャラクターよりも味のあるプレイができる。

また、想定される短所は次の通りです。

  1. アクターで統合されることで、キャラクターごとの細かな違いが無視される恐れがある。
  2. プレイヤーが同じである以上すべてのキャラクターに類似点がありえる。結局一人のアクターとなってしまう恐れがある。
  3. 違うデータや舞台設定から作成されたキャラクターを、同じアクターでまとめるのは難しい。
  4. 外見などが大きく異なるキャラクターを同じアクターとするには無理がある。
  5. アクターによってそのキャラクターに対する反応が類型化される恐れがある。

しかしこれらの問題点も、その効能を考えれば克服の努力をするに足ると私は考えます。

アクター方式はそれほど革命的なアイデアではありませんが、今までのプレイを整理し、新たな可能性を見出そうとする方のために少しでも役に立つことを期待しております。

(1997年5月15日作成)