「導入型」の設定 (1998年執筆)

本論考は、1998年1月20日に発表されたものです。文中の趣旨が、現在の筆者の考察とは異なる場合もありますので、ご注意願います。

はじめに

私はプレイヤーよりもマスターとして卓につくことが多い方です。そのマスターの視点から見ると、「シナリオ導入部」で最も重要な問題は、「キャラクターが、そのシナリオのプロットにうまく絡んでくれるかどうか」ということです。これは、プレイヤーが何をしでかすかわからない、何に興味を持つか予想できない、ということでもあります。

逆にプレイヤーの側から見ると、「何をすればシナリオの本筋に絡めるのかわからない」ことがしばしばあって、これも大きな問題となります。

キャラクターをシナリオの本筋にスムーズに絡ませるための工夫として、(本来は自作ルールシステムの一部として)私が考案したものが、次に示す「導入型」です。

導入型

「導入型」は、そのキャラクターの"シナリオへの絡み方"を三通りに類型化したもので、全てのキャラクターはその内の一つを自分のそれとして選ばねばなりません。

三つの「導入型」とは次の通りです。

依頼型
キャラクターは、何者かから頼みを受ける立場にある。それが、職業によるものか、性格によるものか、あるいは出自に関係があるかなどは、プレイヤーが自由に設定して良い。
探求型
キャラクターは、変わったことにはすぐに興味を抱き、黙っていられない性分である。それが、職業的な興味としてのものか、性格的なものか、あるいは過去に原因があるかなどは、プレイヤーが自由に設定して良い。
巻き込まれ型
キャラクターは、起きていようが寝ていようが、外にいようが中にいようが、望むと望まざると、何事かに巻き込まれる運命にある。それが、前世の因縁か、何者かの呪いか、あるいは純粋に運が悪いだけなのかなどは、キャラクターの知るところではない。

使い方

「導入型」の使い方には、次の二通りがあります。

  1. マスターはシナリオ毎に、三つの内どれか一つを選択して、導入部を用意しておく。
  2. シナリオ開始前、もしくは開始後に、その「導入型」を持つキャラクターを指名し、シナリオの発端を担当させる。
  3. その場面がその者一人の独壇場となるが、時間はあまりかからない。
  1. マスターはシナリオ毎に、二つないし三つの異なる「導入型」各々に基づく導入部を用意しておく。
  2. シナリオ開始後、それらの導入部を、対応する「導入型」を持つキャラクターに順に当てていく。
  3. 結果、すべてのキャラクターを何らかの形で当事者とすることができるが、時間はかかる。

長所と短所

上記の方法は、実際のプレイの場で既に一般的に行われていることを、ルール化したものにすぎません。わざわざ類型化することで、シナリオ・プロットへの自由な発想に基づく接触を阻害し、新しい可能性の障害となる恐れがあります。

しかし、その代わりに次のような効果があります。

  • 「きっかけ」となる事象がどのように登場するかは、「導入型」ごとに類型化されている。そのため、「きっかけ」が何であるのかに迷ったり、「きっかけ」の取り合いになること、また無関係な情報を「きっかけ」と勘違いすることを回避しやすくなる。
  • 「導入型」によって、導入時に何をすれば良いかは類型化されている。また異なる型であれば出番も異なる。そのため、慣れないプレイヤーが、何をして良いか分からず、あるいは他に遠慮して、活躍し損ねることが無くなる。
  • マスターがシナリオを用意する際に、異なる「導入型」用の導入部・情報・きっかけの現れ方を考慮しておくことが、期待される。その結果、シナリオを多面的に検討するための一助となりうる。

「導入型」のすすめ

経験多く、自在にシナリオ・プロットへ絡んでいくことのできるプレイヤー、またどのような立場のキャラクターにとっても自然な「きっかけ」を用意することの出来るマスターには、「導入型」は不要です。

しかし、まだその境地に達していない者にとっては、シナリオ導入部をより簡単かつ平等なものとするための、有効な手段となりえるものと信じます。