卓上ロールプレイングゲームについて (1999年執筆;未完)

本論考は、1999年2月2日に発表されたものです。文中の趣旨が、現在の筆者の考察とは異なる場合もありますので、ご注意願います。

卓上RPG(Table-top Role Playing Game)」という名の、新しく面白い遊びがあります。歴史があまりに浅いため、まだまだ誰もが気軽に楽しめるものではありませんが、私にとっては最も面白い娯楽です。このゲームについて、まだご存知無い方のために私なりの説明を試みます。

まだ若い遊戯

卓上ロールプレイングゲーム」(Table-top Role Playing Game;以下「卓上RPG」と称す)は、1970年代半ばにアメリカで作られた、まだ歴史の若い遊戯です。日本では、その約10年後(80年代半ば)から翻訳版が発売されはじめ、一部愛好家によって楽しまれつつ、今日に至っております。

なお、コンピュータRPGと区別する時に日本ではしばしば「テーブルトーク」の名で紹介されますが、ここではアメリカで用いられる「Table-top」という語、及びその訳語である「卓上」を使用します。

卓上RPGの目的

この遊戯の目的は、複数の参加者全員が協力してひとつの物語を創っていく、というものです。「共同創作」と称するならば文芸活動の一種と思われるかも知れませんが、大抵は娯楽ジャンル(アクションやホラーなど)を扱い、また各参加者が登場人物の視点からその物語を「体験する」という実態は、ゲームと称して間違いないものです。

但し、"ゲーム"と言っても参加者同士で何かを競い合うことは少ないので、勝ち負けに終わるタイプのゲーム(トランプゲームや将棋など)とは趣を異にします。また、複数の参加者が平等に物語の展開に関与する点で、小説や映画とも異なります。さらに、誰も予期しなかった展開すら偶発的に起こり得るという点で、ゲームブック(読者が選択肢を選ぶことで異なる展開を読む小説)やコンピュータゲーム(複数の物語を用意しているもの)とも違います。

「遊び方」と「ルール」

さて、典型的な遊び方を紹介しましょう。

予めお断りしておきますと、卓上RPGでは「遊び方」と「ルール」とが別物として扱われております。大抵のゲーム(例えばババヌキを思い出してください)では「ルール」がそのまま「遊び方」の説明となっていますから、少々変わった特徴です。このことがこの遊戯を分かりにくいものとしている原因の一つでもあるのですが。

卓上RPGの「遊び方」

では、まず「遊び方」について説明しましょう。

典型的な遊び方では、まず複数(多くは4~6人程度)の参加者が集まり、ひとつの卓を囲みます。卓の大きさは洋風の食卓程度と考えていただければ良いでしょう。要は、数枚の紙や参考となる書籍などを置くことが出来、かつ、くつろいで談笑できる環境であれば良いのです。人数が少なければコタツ程度の大きさでも問題ありません。

ゲームを始める前に、物語の舞台などを決めます。これから始まる物語のジャンルや舞台となる時代と場所、使用するルール(ルールについては後述します)や、どのような傾向の物語にするかを、参加者全員で話し合います。尤も、誰か一人が予め決めておいて、他の同意の下で始める場合も多いのですが。

参加者の内一人は、他の者とは少し違った、特別な役割を果たします。先に決めた物語のジャンルなどに基づいて、物語を創る準備をし、脇役の登場人物を担当し、情報を管理します。ゲームの進行上で主導的かつ重要な役割を果たすので、この担当者を「ゲームマスター」「マスター」などと呼びます。

他方、余の参加者は「プレイヤー」と呼ばれ、物語の主役となる登場人物(キャラクター)を一人ずつ担当します。

遊戯の本編は、各々が担当する登場人物の行動描写を基本とした、参加者同士の会話によって進行します。

  1. まずマスターが、プレイヤー担当の登場人物の周囲の状況を説明します。
  2. それを基にして、各プレイヤーは自分が担当する登場人物の行動を決定し、表明します。
  3. それを聞いたマスターは、その行動によって起こった影響を、環境の変化や脇役の行動などで説明し...

このようなやり取りの繰り返しが、物語の形を創っていくのです。

登場人物間のやり取りは、プレイヤーとマスターの間だけではなく、プレイヤー同士の間でも、"運命を共にする仲間"のそれとして、交わされます。物語の中では、状況次第でプレイヤーのそれとは異なる人間関係を築くこともあり、その体験も卓上RPGならではの楽しみですが、それ以上の楽しみもあります。

各プレイヤーは、自分が担当する主役の行動を決めることは出来ますが、他の主役や脇役のそれを決めることは出来ません。マスターは脇役を操ることは出来ますが、主役が何をするかは知る由もありません。不完全な権限を持つ者同士の間のやり取りの中で、どのような物語が出来あがるのか?それは当の参加者にすら分かりません。誰も先が分からない物語を自分たちで作り出していく楽しみ。これが卓上RPGでなくては得ることの出来ない、最大の喜びなのです。

(以上、1999年2月2日掲載)

卓上RPGの「ルール」

(以下、継続)