自由に遊ぶためのシナリオ

「自由に遊ぶためのシナリオ」とは、キャラクターの行動を決めるためのネタ(判断材料)を揃えたものです。ただ、それだけ。

プレイヤーがPCの行動を、ゲームマスターがNPCの行動や状況の変化を、各々考えて決める際の参考となるネタを、私は「事件」「人物」「場所」の三種類で考えます。これらを揃えることが、「シナリオを作る」ことです。

「事件」は、過去に起こったか、現在起こりつつある、あるいは未来に起こるかもしれない、重大な出来事です。単純なシナリオなら一つ、少し複雑にしたいなら二つ、キャンペーンなら三つ以上絡めても良いでしょう。

「人物」は、「事件」と関係を持つ主要NPCです。過去の体験、現在の状況、そして未来の目標を持ち、それらに従って行動します。一回のプレイで三人前後に抑えるのが無難です。一人もいないこともあります。

「場所」は、「事件」や「人物」と関係する、大小様々な空間です。他には代替不能なもの、進行次第で変更されるもの、ゲームプレイ中に急遽用意されるものがあります。登場先が限られるNPCは、「場所」の一部とします。

ネタに対してキャラクターの行動は「何をしても良い」のであって、あらかじめ何らかのストーリーが予定されることはありません。

ゲームマスターはプレイヤーが何をしても対処できるように、ひとつひとつのネタについてPCが何をしたらどうなるか、と様々な可能性を想定しておきます。この作業を、「シナリオを練る」と言います。市販シナリオなどでも必要な作業です。

様々な可能性といっても、ありとあらゆる状況を想定する必要はありません。極端な可能性を二つ三つ考えておけば応用が利くでしょう。それに対してPCが何もしなかった場合どうなるか、も想定しておきます。これによって、ひとつひとつのネタのイメージを膨らませ、設定を充実させることができます。

想定された内容は、そうなることが予定されたストーリーではありません。ネタとして「PCが倒そうとするかも知れない悪漢がいる」ことと、ストーリーとして「PCが悪漢を倒そうとする」ことを予定するのとは、まったく別のことです。

ストーリーが事前に決まっていない未完成なシナリオは、プレイヤーやゲームマスターが「何をしたか」という結果によって完成します。

プレイヤーがPCを「駒」として活躍させるように、ゲームマスターは「事件」「人物」「場所」を「駒」として用います。相手の「駒」の動きを見て、自分の「駒」をどう動かすか、どう動かしてゲームプレイを面白くするか、と考えます。「駒」同士の駆け引きの中に生じる展開こそが、真にドラマティックなものとなります。

予定されたストーリーはありませんから、そうなるようにゲームマスターがプレイヤーの「駒」を「誘導」する必要もありません。自分の「駒」を動かすことを楽しみ、あとは成り行きに任せましょう。

PCがシナリオの想定範囲から逸脱するなら、その旨を告げ、行動変更や再登場を待ちます。逸脱しないまでも想定外の行動に、咄嗟の応用も利かないなら、休憩時間を取るのが良いでしょう。所詮は遊びなのですから、上手くまとめようと気張る必要はありません。一息ついて、じっくり想像を巡らせましょう。

このように作られ、遊ばれるシナリオが、「自由に遊ぶ」ためのシナリオです。シナリオに合わせて遊ぶのではなく、遊ぶためのネタでしかないシナリオなのです。

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