RPGへの接し方、野球風

「自由に遊ぶ」ゲームプレイの位置づけを明らかにする二つめの論考では、卓上RPGへの接し方を、野球に喩えつつ、分類します。

卓上RPGに対してその遊び手がどのように接するか、その多様性を理解するにはゲーム経験の量ではなく幅が必要です。その体験差を埋めるために、ここでは「野球を楽しむ」という別の行為を例にとって説明します。大項目は三つ。

  1. 野球に参戦
  2. 野球を観戦
  3. 野球の物語

以下、細分化しつつ説明。

  1. まず「野球に参戦」することで「野球を楽しむ」方法があります。いわゆる「筋書きのないドラマ」を、その登場人物の一人として楽しむのです。この接し方は更に、どういう野球を目指すかによって細分化されます。
    • 「プロ野球」は、勝敗もさることながら、観客を見せる(魅せる)ために行われます。卓上RPGでは、リプレイにするためのゲームプレイがこれに当たるでしょう。特に「プロ」によるそれが。
    • 「甲子園野球」は、勝つことが目的です。勝負に全力を尽くす悦びがあります。卓上RPGでは、戦術や駆け引き、謎解きなどによるシナリオ攻略を中心とするゲームプレイがこれに当たります。
    • 「草野球」は、野球をすること自体が好きでやられるものです。野球ができればそれで良いのであって、勝敗などは二の次です。卓上RPGを「自由に遊ぶ」とは、これに当たります。
  2. 次に「野球を観戦」することで「野球を楽しむ」方法があります。「筋書きのないドラマ」を、観客の一人として楽しむのです。こちらの接し方は、ドラマにどこまで近づくか、どこまで付き合うか、によって細分化されます。
    • 「球場」で観れば、生のドラマを眼前で、楽しむことができます。現場の興奮は「参戦」に似ており、またそれを他の観客と共有できます。卓上RPGでなら、積極的に行動しなくとも、プレイヤーの一人として同席できるだけで楽しい、というものが近いでしょう。
    • 「中継」で観るなら、専門家の解説つきで、一人のんびり観ることができます。卓上RPGでいうなら、プレイ記録としての性格が強い「リプレイ」または「プレイレポート」を読む楽しさです。
    • 試合の見せ場のみをドラマティックに編集した「ダイジェスト」(要約)を観ることは、時間節約以上に、ドラマ性の強化を指向するものです。卓上RPGなら、面白おかしく編集した「リプレイ」や「リプレイマンガ」です。
  3. 更に「野球の物語」を楽しむのも、あえて「野球を楽しむ」内に含めましょう。野球を中心に置いた小説、映画、マンガなどです。野球の中に「筋書きの無いドラマ」を見出すのではなく、ごく当たり前の「筋書きのあるドラマ」を楽しみます。細分化は、ドラマの種類として可能ですが、省略。卓上RPGで喩えるのも、省略。

以上のように多種多様な「接し方」は、それを楽しむための選択肢です。あなたが楽しむ時は、あなたが「自分が面白いと思う」ものを選ぶでしょう。皆で楽しむ時は、全員の「自分が面白いと思う」ものを合わせられるものを選べば良いのです。多くの選択肢があれば、皆で楽しめる場は増えます。

もちろん、野球での好みと卓上RPGでの好みとは、好きな順序も一致しますまい。その辺は差し引いて考えてください。現に私は、卓上RPGでは「草野球」を最も好みますが、野球なら「野球マンガ」が一番好きなのです。

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