自由なミステリーを遊ぶ

ダンジョン、ワイルダネスと来たら、最後は「シティ・アドベンチャー」。戦闘行為が公然としては認められていない街中などで、専ら情報収集のための行動を楽しむものです。近現代を舞台とするゲームシステムでは、しばしば基本となる設定です。

その中でも特に、推理小説風の謎解きを扱う「ミステリー・シナリオ」の運用について考えてみます。シナリオの中心となる事件が、殺人、盗難、誘拐、脅迫など、どんなものであれ、「自由なミステリー」は次のような構成となります。

  • 事件 : 既に発生したか、これから発生する(かも知れない)犯罪と、そこに生じる「謎」。
  • 人物 : 事件の被害者と加害者、(自覚の有無に関わらず)手掛かりを握る人物、事件を追う人物、など。
  • 場所 : 事件の発生場所、手掛かりが得られる場所、被害者や加害者が現れる(現れた)場所などと、そこで起こるイベント。

プレイ開始の時点で「事件」が既に起こっているのであれ、防ぐ間もなくプレイヤーキャラクター(PC)の目前で起こるのであれ、起こるまでまだ猶予があるのであれ、それとどのように関わるかは、プレイヤーの「自由」です。謎を解いて事件を解決するか、事件の発生そのものを防ごうとするのか、傍観を決め込むか、加害者側に就くか、事件に繋がる背景を別のことに利用するか、などはプレイヤーが「自分が面白いと思う」ように選びます。

例えば「事件を解決する」にしても、地道な聞き込み、資料収集、関係者の懐柔や脅迫、関連施設への侵入、手掛かりの捏造など、具体的な行動はプレイヤーの発想次第です。関わっていく中で、関わり方が変化することもありえます。「事件を解決する」ために捜査した結果、「加害者側に就く」方が「面白い」と判断する、など。「自分が面白いと思う」のであれば、「謎」を解かなくても構いませんし、事件を解決する必要もありません。

シティ・アドベンチャーもワイルダネスと同じように、「何をしても良い」範囲は広くなります。ただし、動ける範囲が野放図に広がるワイルダネスに比べ、街中でできることの範囲はプレイヤーの知識と発想とに左右されます。現代日本なら、コンビニ、百円ショップ、ホームセンターでどのような装備を揃えられるかは明白ですが、咄嗟にそれを思い出せるでしょうか?史実に則った舞台設定では、その時代についての知識が必要になります。ファンタジーやSFとなると、どれほど綿密な世界設定でも記載されない情報量が多く、かなり想像力を働かせなくてはなりません。

このように為されたプレイヤーの(PCの)行動を受けて、非プレイヤーキャラクター(NPC)にどのように反応させるか、どのような情報を示すかは、ゲームマスターの「自分が面白いと思う」発想と判断によって決まります。プレイヤー同様、ゲームマスターにとっても、「謎」は必ずしも解かれねばならないものではありません。「人物」や「場所」と同様、「自分が面白いと思う」ように遊ぶための材料に過ぎないのですから。そのため、「謎を解こうとする」か否か、解けた場合と解けなかった(解かなかった)場合と、どちらの状況をも予め想定しておくと良いでしょう。

「自由なミステリー」を遊んだ結果は、おそらく推理小説のようにはなりません。推理小説風のゲームプレイを遊んだ、という事実だけが残ります。その過程を小説やリプレイにしたところで、読者を楽しませるなどは望むべくもありません。

なお、「管理されたミステリー」では、それこそ推理小説のような「最も面白い」展開が設定されています。同じような事件であっても、「積極的に謎を解こうとする」か「たまたま巻き込まれて解くことになる」か、どのような行動によってどのような情報を得て、どれだけ揃えて謎を解くのか、クライマックスでどのように決着をつけるのか、などは異なります。それらをゲームマスターは適時示唆し、プレイヤーは注意深く見極め、協力して「最も面白い」ゲームプレイを成立させるのです。

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