06 初心者専用RPG

このカテゴリーでは、「初心者専用RPG」というものについて考えてまいります。初心者「向け」ではなく、「専用」というのがミソ。

カテゴリーを立ててから、かれこれ半年ばかり放ったままでした。いよいよ記事を書いてまいりますよ。

初心者向け」という言葉があります。卓上RPGでは、ゲームプレイ初心者でも遊び易いゲームシステムに対して使われます。例えば、キャラクター作成や成功判定のために用いるデータが少なく、処理する手順も単純なら、「初心者向け」ルールシステムと評価されます。遊ぶために憶えねばならないことが少なければ、慣れていない者への負担が少ないだろう、と推測されるためです。

初心者ならともかく、ベテランでは付き合っていられない、そんな「初心者専用」のゲームシステムをデザインするとして。だからといって、システムのすべてをそうしなければならないわけではありません。ゲームシステムのどこを「初心者専用」にするのか、を考えてみましょう。

過去にもしばしば語ってきたように、私はゲームシステムを次の三要素に分解して考えるようにしています。今回も、これに則って考えます。

「初心者専用ルールシステム」を考えるに先立ち、まず「ルールシステム」についての私の考察を示します。

プレイヤーとゲームマスターは、ゲーム世界内での様々な事象を、キャラクターを介して体験します。その際、それら諸事象について表現するために用いられるのが「データ」です。そして「ルールシステム」とは、それら「データ」の扱い方を規定するものであり、「データ表現ルール」「データ作成ルール」「データ運用ルール」の三つから成り立ちます。

私が考える「初心者専用ルールシステム」とは、卓上RPGのルール扱いに慣れていない者が、それを覚えなくとも、数回は遊ぶことができる、というものです。そうなると、「データ」やその「作成ルール」「運用ルール」は、少なければ少ないほどよい、むしろ無い方が良い、ということになります。

以下、「初心者専用ルールシステム」の極端なデザイン例として、「データの無いルールシステム」を示します。現行一般的なルールシステムの対極に位置するもの、と言えるでしょう。

今回は「初心者専用ルールシステム」の更なる例として、既存ルールシステムの「初心者専用化」を試みます。前回のような極端な例を前提にすれば、大胆に削っていくことが可能に、というより平気になります。「初心者専用」に飽きたなら、そのまま本来のルールシステムに移行できる、というのも長所。

削られてしまう既存ルールシステムには、私がこよなく愛する「Basic Roleplaying (BRP)」システムを取り上げます。最近海外ではやたら元気なBRPですが、日本語版が流通しているのは『クトゥルフ神話TRPG』くらいなので、データなどはそちらから流用します。ただし、必ずしも「クトゥルフ神話」を扱うゲームとするわけではありませんので、ご注意。

「初心者専用世界設定」を考える前に、今回は「世界設定」について私の考えをまとめます。

プレイヤーとゲームマスターが、ゲーム世界とキャラクターとを本当に存在するかのように想い描くには、それらの「リアリティ」(本当らしさ)を掴んでおく必要があります。そのための参考資料となるのが「世界設定」であり、ゲーム世界の地図や歴史、慣習や法律など様々な手掛かりを提供します。例えば次のような事柄を「世界設定」の中に見出しつつ、「リアリティ」を掴み取っていきます。

私が考える「初心者専用世界設定」とは、異質な世界を受け入れるのに慣れていない者が、そのための努力無しに数回は遊ぶことができる、というものです。これに叶う世界設定とは、その世界の「リアリティ」(本当らしさ)が我々と同質なもの、あるいは異質であっても受け入れなくて良いもの、と考えられます。

以下、「初心者専用世界設定」の極端な例を、三つ挙げてみます。一つめにリアリティを同質としたものを、後の二つにはリアリティを受け入れなくて良いものを。

ルールシステム、世界設定と来て、残るは「遊び方」(遊戯法)。この概念について、私の考えをまとめます。

卓上RPGにおける「遊び方」「遊戯法」とは、「ルールシステム」と「世界設定」とを使って、どのように遊ぶか、という方法論です。同じルールと世界とに異なる「遊び方」を用いることが可能、異なるルールと世界とを同じ「遊び方」で扱うことも可能です。

私が考える「初心者専用の遊び方」(初心者専用遊戯法)とは、プレイ参加者が共有すべき「コンテクスト」(背景認識)が極めて厳密に定まっているものです。キャラクター以前に、プレイヤーとゲームマスターとが「何をすれば良いか」が限定されるため、責任も負担も軽減されます。卓上RPGを生まれて初めて遊ぶ「初心者」に適した遊び方です。

ここでは、そのような「初心者専用の遊び方」を三例あげます。ただし、実際の「遊び方」は遊びの現場で個別に構築されるものですから、その軸となる「シナリオ形式」のみを示すに留めます。

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