巨大ロボットの世界観

BRPの世界観」に続き、今回は「汽動重機ゲオマキナ」という「巨大ロボット」から世界観を抽出します。最初に示した「設計思想」(Design Concept)と、既に行ったルールデザインとの中に、それを見出すことができます。

「設計思想」(Design Concept)とは「世界観」の一部であって、ゲームデザインにおいてゲームデザイナーが意識して組み込んだ「世界観」のことです。もし「設計思想」と「世界観」とが相容れなければ、作るつもりだったものができていないわけですから、どちらかを修正しなくてはなりません。

ゲオマキナの「設計思想」を過去の記事から引用すると、次のようになります。

  • ゲオマキナは、他の兵器よりも強く、他のゲオマキナでないと倒せない。(巨大ロボットとは何か)
  • ゲオマキナに乗り込んだ操縦者に勝つには、ゲオマキナを倒すしかない。(同上)
  • ゲオマキナを操縦する者には、特殊な立場や権限、関心などが与えられる。(同上)
  • ゲオマキナを、プレイヤー用キャラクター(PC)たちが協力して操縦する。(TRPG用巨大ロボットの試作)
  • ゲオマキナの操縦者(PC)たちは皆、目的や生死を共にする仲間同士となる。(同上)
  • ゲオマキナの操縦者(PC)たちは、協力連携して難題に取り組むことになる。(同上)
  • ゲオマキナの外観は、全身を金属鎧で覆い巨大な盾を構えた「力士」である。(ゲオマキナのイメージ)
  • ゲオマキナは戦闘では、敵に砲撃をしつつ近づき、盾を接して近接戦に入る。(同上)
  • ゲオマキナは、仲間と荒野を旅する乗物、昼夜を過ごす宿、憩いの場である。(同上)
  • 操縦者以外にとって、ゲオマキナがどのような存在であるかは、様々である。(同上)

残る、意識されなかった「世界観」の方は、ゲームデザイナーが「何となくそうデザインしてしまった」ルールシステムなどの中に既に込められています。それらひとつひとつについて、「何故そうしたのか?」と追及することで、解釈し抽出することができます。例えば、次のように。

  • 私は何故、ゲオマキナをプレイヤーが一から作れるようにしたのか?既製品から選ばせるのでなく、幾つかの部品を組み合わせさせるのでもなく。それは、この世界の巨大ロボットが各々独自性の高い機体であり、大量生産されるものではない、という世界観を私が持っていたからであろう。

たとえ自分自身のことであっても、「解釈」であって、正しいかどうかは分かりません。往々にして願望が混ざりますから、むしろ感性の異なる他人の方が正しく解釈できるかも知れません。それでも、自問自答する他なし。

  • 危険な甲板があるのは、巨大ロボット同士であっても、危険に身をさらして戦う人と場所が必要だ(という世界観を私が持っている)から。
  • 周りを装甲で守られた操縦席もあるのは、そこに生命と運命を固定されて役割に徹する人と場所も必要だ(同上;以下略)から。
  • 観測士がいるのは、機械を通して得られた情報よりも生身の五感の方が重要で役立つから。
  • 機関士がいるのは、その場その場で力点を細かく調整することが、時に生死すら分けるから。
  • 操腕士と操脚士とに分けたのは、人型では上半身と下半身の連動が全身の力と生み出すから。
  • 砲撃や銃撃の装備しているのは、近接戦闘無しでも戦えれば、機体や戦術の選択肢が増えるから。
  • 武器や盾を装備しているのは、射撃戦闘無しでも戦えれば、機体や戦術の選択肢が増えるから。
  • 操縦者の作成に既存の職業データを用いたのは、他の職業者が操縦者を兼務することが多いから。
  • 先行する操縦判定の失敗が後続する判定を(不利にはしても)禁じないのは、全員の連携でひとつの判定をしているようなものだから。

このような自問自答は、「世界設定」を作成する中で随時、繰り返されます。「無意識の世界観」が自然と世界設定に活かされれば良いのですが、好きなマンガや映画などの設定をつい部分的に真似てしまうことも少なくないので。自分の無意識を問い詰めるのは苦悩もあれど、楽しい作業です。

あと、何故人型なのか(戦車ではないのか)、何故蒸気機関なのか(核融合などではないのか)、何故複数人で動かすのか(一人で動かせる機体はないのか)などについて、「世界設定」上でも何らかの理由(こじつけ)を考えなくてはなりません。これもまた楽しい作業です。

これらの「世界観」すべてを「世界設定」として記述する必要はありませんが、両者が矛盾しないようには注意しなくてはなりません。その上で、いよいよ「世界設定」のデザインに移ってまいります。

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