11 メタゲームって何?

卓上RPGについて語る際に、「メタゲーム」という語が用いられることがあります。この「メタゲーム」なるもの、語る者はさも当たり前のように語るのですが、私にとっては定義がさっぱり分からない言葉でした。白状すると、大方、社会学辺りにかぶれた者が、その尻馬に乗って使い始めたのだろう、程度に思っていたのです。はい、これは間違いでした。白状すると共に、訂正します。

メタって何?

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「メタゲーム」の前に、まず「メタ」という語について考えてみます。

この語は、例えば「自由」のように卓上RPGについて独自に用いられた語ではなく、他の学問から借用したもののようです。幾つか資料に当たってみましたので、私なりに理解したところをまとめてみましょう。以下、文中の「○○」は、任意の語が入る、という意味。

前回述べた定義に則り、卓上RPGにおける「ゲーム」に対する高次概念「メタゲーム」について考えてみます。つまりは卓上RPGの現場に「階層構造」を見出し、その関係が「メタ」なものになっているかを探っていくわけです。

まず、基本的に、というか、避けられないものとして、次のような「階層構造」があります。

  1. プレイヤー階層 : プレイヤーとゲームマスターとが、ルールブックや設定資料集、シナリオを用いて遊ぶ
  2. キャラクター階層 : キャラクター(PCとNPC)が行動し、舞台世界の状況を変えていく

先行する記事「メタって何?」と「卓上RPGの階層構造の基本」とに基づき、卓上RPGにおける「メタゲーム」について整理します。

ゲーム (ゲームプレイ)
キャラクター(PCとNPC)を行動させることで、舞台世界を変えていくこと。(広義のゲーム)
キャラクター自身の知識などによって、キャラクターの行動を決めること。(非メタゲームとしてのゲーム)
メタゲーム (メタゲームプレイ)
キャラクターが知らない、プレイヤーやゲームマスターの知識などによって、キャラクターの行動を決めること。

「メタゲームとは悪いものだ」という考え方は、こちらなど、英語で書かれた資料に見受けられました。そこに示された「悪いメタゲーム」とは、次のようなものです。

悪いメタゲーム
キャラクターは知らないはずの、プレイヤーの知識やルール運用によって、ゲームプレイを有利に進めること。
キャラクターではなくプレイヤーとして、シナリオのプロットやルール運用について、他の参加者と語り合うこと。
キャラクターではなくプレイヤーとして、ゲームプレイと関係のない話題について、他の参加者と語り合うこと。

キャラクターの行動を決める際、「キャラクターの知識や信条、都合など」と「プレイヤーの知識や信条、都合など」との、どちらを優先するのか。あるいは、端からどちらかしか無いのか。その違いによって、四種類の遊び方を想定することができます。

「メタゲーム」という言葉にこだわって、これらを「強いメタゲーム」「弱いメタゲーム」「非メタゲーム」「反メタゲーム」の四つに分類し、各々について考えてみます。

本カテゴリー「メタゲームって何?」の前半では、上位の「プレイヤー階層」(プレイヤーとゲームマスター)と下位の「キャラクター階層」(キャラクターと舞台世界)という二つの階層構造をあげて、その間にある「メタ」な関係について論じました。即ち、次のような関係。

  1. 上位階層(プレイヤー)は、下位階層(キャラクター)について、俯瞰し、解釈し、評価することができる。
  2. 上位階層(プレイヤー)は、下位階層(キャラクター)への解釈/評価に基づいて、それに干渉することができる。
  3. 下位階層(キャラクター)は、上位階層(プレイヤー)に干渉できない。認識することもできない。

そして、このような「メタ」な関係は、各階層の内部にも見出すことができます。

「キャラクターの中のメタ」の1番目は、ファンタジーRPGなどでよく用いられる「冒険者」。特に「メタ」な意味でのそれについて。

「冒険者」の原語は「Adventurer」で、直訳的には「Adventureする者」「危険を冒す者」「冒険好き」といった意味です。この呼称には二つの用法があり、ここではそのひとつ、プレイヤーがPCにさせることとしての「冒険する者」について論じます。もうひとつの、舞台世界において職業もしくは社会身分として認識されるような「冒険者」については、また別途扱います。

さて、このようなPCの内には、次のような「階層構造」が成立します。下記1「冒険する者」が最も上位にあり、より下位にある2「その能力」や3「その設定」を俯瞰/解釈/評価し、評価に基づいてそれらに干渉していきます。

「キャラクターの中のメタ」の2番目は、クトゥルフ神話TRPGの「探索者」について。基本は先の「冒険者」と同じで、その応用として紹介します。

「探索者」の原語「Investigator」は、「Investigateする者」「謎について調べる者」「調査好き」といった意味です。このようなPCでは、「探索する者」が最上位となって他を左右する、次のような「階層構造」となります。

「キャラクターの中のメタ」の3番目は、「リアルなキャラ」。そのゲームの舞台世界が本当にあったなら、きっとそこにいるであろう人物を、キャラクターとする場合について。

「リアルなキャラ」への希求は、おそらくは「駒としてのキャラクター」に対する反省から生まれました。空想の世界で遊ぶにせよ、単なる「駒」では飽き足らない。その世界なりのリアリティ(本当らしさ)を備えた人物、その世界に本当に生きているような人物を、己の分身としたい。このような想いは、良質な小説や映画から得られるような喜びを卓上RPGに求めた者にとっては、自然なことだったでしょう。

「リアルなキャラ」においては、何よりも「リアリティ」が優先されます。そのようなPCの「階層構造」は次の通り。

「キャラクターの中のメタ」の4番目は、「キャスト」について。それをPCの呼称とするトーキョーNOVAに限りません。

「キャスト」(Cast)とは演劇や映画における「配役」のことであり、ストーリー上の重要な役割が俳優に配されること(キャスティング)です。卓上RPGでは、PC全員をまとめて「冒険者」などとするのではなく、PC一人一人に個別の役割が配されるゲームプレイを指す、とします。

このようなゲームプレイが生まれた背景には、「リアルなキャラ」への反省もあったのでしょう。個々のリアリティを練り合せるためには、手間暇(コミュニケーションと時間)が必要です。さもなくば、参加者同士で解釈が食い違い、シナリオ進行が停滞し、そしてゲームプレイは破綻します。また、真に小説や映画のようなストーリーは、その世界のリアリティから生まれるのではなく、その登場人物が担う役割によって構築されるのです。

ここまでは「キャラクターの中のメタ」として、「冒険者/探索者」「リアルなキャラ」「キャスト」といった階層構造について述べてきました。ここからは、それらの上位にある「プレイヤー階層」(プレイヤーとゲームマスター)内部の階層構造について考えてまいります。

「キャラクターの中のメタ」に対して、プレイヤーは更にメタな位置から、それらを俯瞰/解釈/評価し、干渉します。例えば「冒険者」であれば、キャラクターの作成や行動に次のように働きかけていきます。

「プレイヤーの中のメタ」の1番目は、ゲーム以前からの友人同士で遊ぶ場合。

元々の友人同士が、ある時卓上RPGを持ち込んで、皆で遊んでみることにした。このようにしてゲームプレイを始める事例は、RPG黎明期では多くがそうでしたし、今でも少なからずあることでしょう。卓上RPGへの、最も原始的な参加形態と言えます。

このようなプレイヤー(ゲームマスターを含む)には、次のような階層構造が成立します。

「プレイヤーの中のメタ」の2番目は、同じゲームを趣味とする仲間同士で遊ぶ場合。

たとえ初対面であっても、同じ趣味を持つ者同士と分かっていれば、友人のような関係を結ぶことが可能です。野球好き同士が野球で、釣り好き同士が釣りで盛り上がるように、卓上RPG好き同士は卓上RPGで意気投合できます。できない人もいますが。

このようなプレイヤーの階層構造は、次の通り。基本的には、「友人」と同じです。

「プレイヤーの中のメタ」の3番目は、理想的なゲームプレイを目指す場合。

卓上RPGを遊ぶからには、その最高のゲームプレイを味わいたい。そう思うのは、ごく自然な欲求です。ただ漫然と遊ぶのではなく、理想に近づけるように努力しよう、協力し合おう。そのような意志を、皆で共有するところにも悦びを感じるのです。甲子園を目指す野球部のように。

このようなプレイヤーが内包するのは、次のような階層構造です。

「プレイヤーの中のメタ」の4番目は、卓上RPGで小説や映画のような物語を作る場合。「理想のゲームを遊ぶメタ」の一例です。

卓上RPGはストーリーを作るゲームであるから、ゲームプレイの展開が小説や映画のようになるのが理想である。このような「理想のゲーム」像を背景に、その実現を目指して皆で協力していきます。

この場合、次のような階層構造が成立します。

「プレイヤーの中のメタ」の5番目(最後)は、卓上RPGを自分用の、一人用ゲームとして遊ぶ場合。他の四種との違いは、ゲーム参加者を「自分」と「自分以外」とに分ける点です。

コンベンションに単身参加、ゲームプレイが終わるまで赤の他人と過ごし、終われば別れる。仲間意識を持つでなく、一緒に何かを目指すでもない。このように遊ぶなら、複数人で遊ぶ卓上RPGも、一人用ゲームと変わりません。他の参加者は、自分が楽しむための道具として必要なのです。コンピュータゲームを遊ぶためのコンピュータのように。

このようなプレイヤー(ゲームマスター)の内面には、次のような階層構造があります。

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